甲状腺に関する検査

甲状腺に関する検査としては、血液検査と形を見る検査等があります。血液検査の結果は必ず主治医に聞いて、説明を受けてください。自分でもメモを付けて、値の変動について関心を持ってください。正常値は各施設によって多少異なりますので、聞いてください。聞いても検査結果を説明してくれない医者は、変えられたほうがいいでしょう。


血液検査

*甲状腺ホルモン

甲状腺ホルモンには、T3とT4の2種類あります。一般には、同時に2つとも測ることが多いです。この値が高いときは甲状腺機能亢進で、低いときは機能低下です。普通T3とT4は平行して変動しますが、病気の状態等により平行しないことがあります。甲状腺ホルモンの大部分は血液中の蛋白(代表がTBG)と結合していますが、実際に作用するのは結合していない遊離(フリー)のホルモンです。そのため、最近はフリーT3,T4を測ることが多くなりました。T3の大部分はT4から体の中で作られます、しかし特殊な場合(重い病気等)ではホルモン作用のないrT3(リバース)が作られることがあります。

*甲状腺刺激ホルモン(TSH)

TSHは、脳の下にある下垂体と言われる臓器から出るホルモンです。TSHは甲状腺にある受容体(ホルモン等が特異的に結合する場所)に結合して刺激し、甲状腺ホルモンの分泌を亢進させます。甲状腺機能亢進症(バセドウ病)では、TSHは抑制され低下します。一方、甲状腺機能低下症ではTSHは増加します。甲状腺機能亢進症、低下症とも多くは甲状腺自体が悪くて起こりますが、時に下垂体やその上部の視床下部が原因のことがあり、その際の鑑別にTSHは有効です。また甲状腺ホルモンに比べて敏感に変動するため、病気の状態や、治療効果を判定するに大変参考になります。

*甲状腺自己抗体(サイロイドテスト、マイクロゾームテスト)

甲状腺に対する自己免疫疾患である甲状腺機能亢進症や橋本病では、甲状腺に含まれるサイログロブリンやマイクロゾームに対する抗体ができます。これを測るのがサイロイドテストやマイクロゾームテストです。病気がよくなっても低下しないことがありますが、あまり心配する必要はありません。最近もっと特異的な測定法が開発され、抗サイログロブリン抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体を直接測れるようになりました。

TSH受容体(レセプター)抗体、甲状腺刺激抗体

甲状腺機能亢進症の原因として、甲状腺にあるTSH受容体に対する抗体ができ、その抗体がTSH受容体に結合してTSHと同じように甲状腺を刺激するのではないかと考えられています。一般に用いられているTSH受容体抗体は、測定原理上厳密には病気の原因以外の抗体も測定しています。そのため、甲状腺機能亢進症の鑑別や病気の状態を知るのに大変有効ですが、この抗体が陰性でも亢進症の可能性があります。また、機能低下症の特発性粘液水腫でも陽性となります。最近、直接甲状腺を刺激する抗体を測定できるようになりました。ただこの甲状腺刺激抗体は感度がまだよくないので、TSH受容体抗体は現在でも使われています。

*サイログロブリン,カルシトニン、CEA

サイログロブリンは甲状腺のみに含まれる物質です。甲状腺癌の、転移や再発の診断に有効です。ただ癌以外の甲状腺の病気でも高くなるため、高いからと言って癌とは限りません。カルシトニン、CEAは甲状腺の髄様癌で増加します。

TRHテスト

脳の視床下部から分泌されるTRHは、下垂体に働いてTSHを増加させます。合成されたTRHを注射して、TSHの反応を見るのがTRHテストです。甲状腺機能低下症の原因場所(甲状腺、下垂体、視床下部)の鑑別や、甲状腺機能亢進症の診断(最近はあまり使わない)等に用います。


形態検査

*超音波検査(エコー)

甲状腺は超音波検査に適した臓器で、外来で手軽に行われます。腫瘍の良性悪性の鑑別や、甲状腺の大きさ等調べるのに有効です。また、後に述べる針生検の際にも用いられます。

*X線(レントゲン)検査

胸などの撮影とは少し違ったX線を使って撮ります。癌の診断に有効で,甲状腺内の細かい石灰化(白く写る)は乳頭癌の可能性があります。

*シンチグラム(アイソトープ)検査、ヨード摂取率、T3抑制試験

放射線物質を服用後、甲状腺に入った放射線を使って撮影します。使う放射性物質には数種類あり、目的が違います。多く用いるヨード(テクネシウムを使うことがあります)は、甲状腺ホルモンに含まれる物質で、正常な甲状腺に取り込まれます。このため、甲状腺に取り込まれた放射性ヨードの割合を測ると、甲状腺の機能を知ることができます。この検査がヨード摂取率です、甲状腺機能亢進症では増加し、低下症では低くなります。機能亢進症の鑑別に有効で、普通シンチグラムと同時に行われます。T3抑制試験は、甲状腺ホルモン剤であるT3(チロナミン)の服用前後でヨード摂取率を比較する試験です。甲状腺機能亢進症の治癒の判定などに有効です。その他、ヨードのシンチグラムは甲状腺腫瘍の診断などに用いられますが、他の放射性物質を使ったシンチグラムと比べて見ることがあります。

*CT、MRI検査

超音波検査の補助として、腫瘍の鑑別や広がりを調べるために用いられます。

*針生検(吸引細胞診)

甲状腺腫等の鑑別のために、針生検をします。用いる針は細い注射針で、それほど痛くありません。腫瘍が小さい場合は超音波検査をしながら刺し、注射器を引いて甲状腺の細胞を取ります。非常に有効な検査ですが、濾胞腺癌の場合は、細胞を見ただけでは良性の腺腫と鑑別ができないので、他の検査の結果と比較して診断します。


甲状腺の病気の治療法

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作成:中井内科クリニック  中井 晃

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